味噌と並んで欠かせない調味料の醤油は、遠く奈良時代の醤(ひしお)という発酵食品や、鎌倉時代の溜(たまり)と呼ばれる調味料にその原形がみられますが、大豆と小麦を原料にした今日の醤油に近いものは、戦国時代に生まれました。
それが、企業の形で生産されはじめたのは、もう少し後のことですが、それでも醤油産業はざっと400年の歴史と伝統をつづっています。
食卓に必ずある醤油はかける・つける・あえる・浸す・煮る・焼くなど様々な調理に利用されています。刺身を食べるときは味だけでなく生臭みを消す効果も発揮していますし、加熱調理したときは香ばしい香りで食欲を増進させてくれます。今では和・洋・中すべての料理に用いられる調味料となりました。
刺身に醤油をつけるのは、美味しさだけではなく醤油に魚などの生臭みを消す、大きな働きがあるからです。これは醤油の中のアミノ酸の一種メチオニンが変化したメチオノールという物質に消臭効果があるためなのです。
例えば、甘い煮豆の仕上げに少量の醤油を加えると、甘味が一層引き立ちます。
おしるこの仕上げに塩をひとつまみ入れるのと同じ効果です。
醤油と砂糖やみりんを合わせて加熱すると、アミノ酸と糖分がアミノカルボニル反応をおこし、食欲をそそる香りと美しい照りが生まれます。
蒲焼、焼き鳥、照り焼きなどの色と香りがまさにそれです。
漬かりすぎた漬物や塩鮭など、塩辛いものに醤油をたらすと、塩辛さが抑えられることがあります。これは醤油の中に含まれる有機酸類などに塩味を和らげる力があるためです。
醤油には、塩分と有機酸が含まれているため大腸菌などの増殖を止めたり死滅さる効果があります。醤油漬けや佃煮など昔ながらの常備菜は、この効果を利用して日持ちを良くしています。
醤油の中のグルタミン酸とかつお節の中のイノシン酸が働きあうと、深い旨味がつくりだされます。このように混ぜ合わせることにより、両方の味がともに非常に強められることを「味の相乗効果」と呼びます。
そばつゆや天つゆなどがこの良い例です。